曾我物の舞踊

そがもののぶよう

 江戸歌舞伎の正月狂言として定着していた曾我物は、必ず結末が曾我兄弟と工藤左衛門祐経との対面で終わっていました。この対面に到るまでに、舞踊の場面が挿入されるのも作劇上の決まりで、様々な曾我物の舞踊が生まれました。

 こうした曾我物の舞踊として、現存している代表的な作品には『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』や『対面花春駒(たいめんはなのはるこま)』などがあります。また曽我五郎と小林朝比奈(または小林妹舞鶴)が鎧の草摺を引き合う〝草摺引〟も曾我物の舞踊の恰好の題材として取り上げられ、『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』をはじめ、『菊寿の草摺(通称・いきおい)』などが作られました。

 文化文政期に変化舞踊(へんげぶよう)が流行すると、変化舞踊の一景として、曾我の世界が取り上げられるようになりました。こうしたものの代表的な作品に『雨の五郎』があります。『雨の五郎』は、二世尾上多見蔵(おのえたみぞう)が演じた『八重九重花姿絵(やえここのえはなのすがたえ)』という、九変化舞踊の一景で、初演の多見蔵に因み「多見蔵五郎」とも称されていました。(M)

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