
鎧櫃の"前"
よろいびつのまえ

偽の佐々木高綱の首を本物と信じた北条時政が、佐々木盛綱に褒美にといって与えた鎧櫃。その胴の前面には大きく「前」と書かれています。
なにもこれは"こっちが箱の前、中に入れる鎧もこちらを前にして収納しましょう"という目印なのではありません。(もちろん裏側に"後"と書いてあるはずもありません)
この"前"の字は、『勧進帳』にも出てくる九文字から成る魔よけの真言「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)」の"前(ぜん)"です。
『臨める兵、闘う者、皆陣をしき列をつくって、前に在り』というのは、「味方の兵は意気揚々としており布陣は磐石で、私を守って前方を固めている。だから敵も悪霊も私に危害を及ぼそうとしても無駄なこと」という意味ととれますので、鎧櫃に"前"と書くのは、敵に対して積極的に出る、という意味と、鎧が前面でしっかり持ち主を守るようにという祈念がこめられていると思われます。(み)

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