草薙剣
くさなぎのつるぎ
≪草薙剣≫とは、ヤマトタケルが父景行天皇(けいこうてんのう)に命じられ東征に向かう際、伊勢の斎宮(伊勢神宮においてアマテラスオオミカミに奉仕する未婚の皇女)である叔母のヤマトヒメから授けられた剣です。
駿河の地で、ヤマトタケルが野火をかけられ焼き殺されそうになったとき、この剣で草を薙ぎ迎火を起こして難を逃れたので≪草薙剣≫と呼ばれるようになりましたが、もともとは≪天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)≫といわれていた剣でした。
アマテラスの弟、スサノオが天界から地上に追放された際、人身御供にされかけていた乙女クシナダヒメを救うため、頭が八つある大蛇、八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したところ、その尾から出てきたのがこの剣でした。八岐の大蛇の頭上には、常にむら雲がかかっていたので叢雲の剣といわれました。
スサノオは天界に帰り、アマテラスにその天叢雲剣を奉納しましたが、天孫降臨に際し、アマテラスから孫のニニギに譲られ、八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)とともに三種の神器として天皇を象徴する宝物とされました。しばらくは天皇の御座所に祀られていましたが、崇神天皇(すじんてんのう)の娘トヨスキイリビメ、続いてその姪に当たるヤマトヒメに託され、安住の地を求めて六十年にわたり各地を転々としたあと、ようやく伊勢に神宮を定めたとき、そこに安置されたのです。
三種の神器のひとつである剣が、なぜ天皇のもとを離れ、長期間、放浪しなくてはならなかったかは、古代史の謎のひとつでしょう。
ヤマトタケルは、草薙剣と呼ばれるようになった天叢雲剣を妻ミヤズヒメに預けたまま没し、ミヤズヒメはこの剣を熱田神宮に納めました。
この剣は、今も熱田神宮に祀られていると言われています。(み)
歌舞伎 今日のことば
バックナンバー
-
「蘭奢待」
-
「実盛の白髪染め」
-
「鎧櫃の”前”」
-
「大口」
-
「かんかんのう」
-
「酒呑童子」
-
「江戸のリサイクル」
-
「首実検の扇」
-
「伽羅」
-
「高野聖」
-
「小幡小平次」
-
「六代被斬」
-
「国崩し」
-
「勘亭流」
-
「公平」
-
「東海道四谷怪談」
-
「魚づくし」
-
「善玉悪玉」
-
「旗本奴」
-
「丁半ばくち」
-
「十種香」
-
「伊勢物語」
-
「草薙剣」
-
「紙衣(紙子)」
-
「平敦盛」
-
「三輪山伝説」
-
「道成寺」
-
「青海苔と太神楽」
-
「見立」
-
「三筆・三蹟」
-
「獅子と牡丹」
-
「寺子屋」
-
「水天宮」
-
「お数寄屋坊主」
-
「赤姫」
-
「虚無僧 その2」
-
「虚無僧 その1」
-
「絵看板」
-
「すし屋」
-
「だんまり」
-
「太郎冠者」
-
「屋体」
-
「鬘と床山」
-
「三遊亭円朝」
-
「道成寺もの」
-
「羽衣伝説」
-
「下座音楽」
-
「消え物」
-
「表方と裏方」
-
「在原行平」
-
「秀山十種」
-
「熊谷直実」
-
「夏芝居」
-
「定式幕」
-
「伊達騒動」
-
「朝倉義景」
-
「大薩摩節 その5」
-
「大薩摩節 その4」
-
「大薩摩節 その3」
-
「大薩摩節 その2」
-
「大薩摩節 その1」
-
「時代物と世話物」
-
「シェイクスピア」
-
「松羽目物」
-
「少年俳優」
-
「板付」
-
「ツケ」
-
「大道具と小道具」
-
「俠客」
-
「大名火消」
-
「閻魔と政頼」
-
「浅葱幕」
-
「玄冶店」
-
「江戸の火消」
-
「苧環」
-
「天覧歌舞伎」
-
「揚幕」
-
「拍子舞」
-
「香盤」
-
「仙人の堕落」
-
「ヒーローからヒロインに」
-
「かけすじ」
-
「一幕見」
-
「曾我物の舞踊」
-
「大前髪」
-
「虎の巻」
-
「名題と外題」
-
「土佐派&狩野派」
-
「襲名」
-
「この世のなごり 夜もなごり」
-
「知盛」
-
「幕間」
-
「佐藤継信・忠信兄弟」
-
「権太」
-
「柝」
-
「黒衣」
-
「並木正三 その4」
-
「並木正三 その3」
-
「並木正三 その2」
-
「並木正三 その1」
-
「独参湯」
-
「天狗」
-
「花道」
-
「落窪物語」
-
「屋号」
-
「千穐楽」
-
「見得」
-
「顔世御前」
-
「義経の家来」
-
「山科閑居」
-
「切口上」
-
「岡村柿紅」
-
「鹿ケ谷」
-
「差金」
-
「曾我物」
-
「しゃべり」
-
「川連法眼」
-
「猿若」
-
「戸隠伝説」
-
「玉本小新」
-
「招き看板」