六代被斬
ろくだいのきられ
平重盛(清盛嫡男)の長男維盛は、『義経千本桜』では源頼朝の意をうけた梶原景時に見逃され高野山に上ったことになっていますが、実際は屋島の戦線から離脱し熊野沖に入水して果てています。
一の谷から壇ノ浦にいたる度々の合戦で、平家の公達は揃って討死、或いは入水して果てましたが、一族の子供たちの末路も悲惨でした。
平家の子孫には懸賞金がかけられたため、田舎の子でもちょっと顔立ちがよいと「平家ゆかりの誰それの子」とあることないこと密告され、命を落としたものが数多くありました。
維盛嫡男の六代も、母や妹たちとともに大文字山のふもとに隠れ住んでいたところを北条時政に捕らえられますが、その容貌があまり美しいので斬りかねていたところ、文覚上人が弟子にしたいと頼朝に直談判におよび、まことに危ういところを助けられます。
平家再興をはかるのではないかという鎌倉方の疑念をそらすために、十六歳で出家しますが、頼朝の死後、後ろ盾だった文覚が遠島になるにおよび、建久10年(1199)、ついに捕らえられ斬られました。
かつて平家に命乞いして救われた頼朝自身が、長じて平家を討ったことから、平家の子は生まれたばかりの幼子まで容赦なく殺させ、また自分を救ってくれた重盛ゆかりのものなら殺さないといいながら、維盛の弟、忠房(ただふさ)や宗実(むねざね)をおびき出してだまし討ちにしました。「六代が三十歳近く(実際は26)まで生き延びることができたのは観音様のご利益だろうか」と、『平家物語』には皮肉な口調で書かれています。※(み)
※『平家物語・巻十二』 ≪六代≫≪泊瀬六代(はせろくだい)≫≪六代被斬≫
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