顔世御前
かおよごぜん
▲湯上りの顔世御前の姿を垣根から覗く高師直の姿を描いている。
芳年「つき百姿 垣間見の月 かほよ」・明治19年(1886年)・大判錦絵・国立国会図書館蔵(禁無断転載)
『仮名手本忠臣蔵』は、元禄年間に起きた赤穂浪士の討入を『太平記』の世界になぞらえて劇化した演目です。
芝居の中で、吉良上野介(きらこうずけのすけ)は将軍足利家の執事であった高武蔵守師直(こうのむさしのかみもろのお)、浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり)は出雲の領主塩冶判官高貞(えんやはんがんたかさだ)となっており、この高師直が塩冶判官の妻顔世御前に横恋慕するところから話は始まります。
『太平記・巻二十一 塩冶判官讒死事(ざんしのこと)』によると、金と権力をにぎっていた高師直は、塩冶判官の妻・顔世(かおよ)が絶世の美女だと噂に聞き、何とか手に入れようとしますが、顔世は貞節を守って相手にしません。あまりしつこく付きまとうので、顔世の侍女が「風呂上りのスッピンの顔でもみせたら熱も冷めるだろう」と思い、手引きをして風呂上りの顔世の姿を覗かせるのですが、高師直はその色香にますます恋心を募らせて...。これは江戸時代流布していた話らしく、師直が風呂場を覗く錦絵がいくつも残っています。
その後、高師直は顔世欲しさのあまり、夫の塩冶判官を讒訴(ざんそ)し、夫婦は子供を連れ二手に分かれて領国出雲へ逃亡を図りますが、高師直の追っ手にかかり悲惨な最期を遂げることになります。(み)
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