羽衣伝説

はごろもでんせつ

 能や歌舞伎舞踊の『羽衣』は三保の松原が物語の舞台となっていますが、"天女が天上から地上に降りて湖や池で天女が水浴しているところを男が覗き、天女の羽衣をこっそり隠してしまう。羽衣がないと天上へ戻れない天女は困ってしまう..."という説話は日本のみならず中国、韓国、東南アジアと広い地域に残されています。

 天女が途方にくれるところまでは同じでも、その後は"天女は男の女房になり、何年後かに男がうっかり漏らした(もしくは天女が誘導して聞き出した)言葉から羽衣の隠し場所を知り、取り戻して帰っていく"もの、"女房になって子供を何人ももうけるが、羽衣を見つけ子供達ともども天上へ帰ってしまう"もの、"子供達は地上に残り、偉業をなす人物になった"もの、また"去った天女に会おうと男や子供が(場合によっては天女の入れ知恵を得て)、いろいろ手段を講じて天上へのぼってくる"ものなど様々なパターンがあるようです。

 羽衣を戻してもらうお礼に、舞を舞ってみせる『羽衣』は、羽衣伝説のエッセンスを取り出し昇華させたものといえましょう。(み)



解説

歌舞伎 今日のことば

バックナンバー