江戸のリサイクル

えどのりさいくる

 現在世界中で地球環境保全のため、リサイクル活動に注目が集まっていますが、江戸という都市は、すでに徹底したリサイクル都市でした。
壊れたからといって、まず物を捨てることはありません。不用品や使えなくなったものはリサイクルに回します。鍋や釜が壊れれば鋳掛け屋、茶碗などの陶磁器もこなごなになっていなければ焼き継ぎ屋...といった専門の修理の職人が行商で回ってきました。桶、下駄、箒なども修理の職人に出して、直せるだけ何度も直し、いよいよもう直せないとなると、木製のものなら木っ端などにして焚きつけにし、最後の最後まで無駄にすることはありませんでした。

 『眠駱駝物語』にでてくる屑買いの久六さんは、そのリサイクル業者のひとりです。
台本には古手買い(ふるてがい。古手とは古着とか古道具のこと)とあります。これは、なんでも引き取っていく回収業です。引き取った品物は分別して、またそれぞれ再利用する業者に渡します。

 落語には『紙屑屋』という話もあります。
遊び人で家を追い出された若旦那が、少しは他人の飯を食って働きなさいと諭され、紙屑屋に奉公にでます。そこで任された仕事が紙屑の仕分け。
同じ使い古しの紙でも、まだそのままつかえそうな紙、漉き返して再生紙にまわす紙、と何段階にも分類します。紙屑にまぎれているみかんの皮は陳皮(ちんぴ)として薬味の材料にします。紙屑に混じって捨ててある髪の毛も、かもじ(つけ毛)の材料になるので捨てることはありません。いろいろなものをより分ける次第が丁寧に説明され、もののあふれた現代からみると、ここまでやるか?というほどのきめの細かい分別がなされていたことがわかります。(み)



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