並木正三 その3
なみきしょうざ その3
数々の作品の成功により、揺るぎない名声を築いていた並木正三が、32歳の時に書き下ろしたのが、『霧太郎天狗酒醼(きりたろうてんぐのさかもり)』です。
この作品は、宝暦11年(1761年)1月に大坂角の芝居で初演されました。謡曲の『是界(ぜがい)』などを題材にして、源氏のお家騒動を扱った『霧太郎天狗酒醼』は、その物語の奇抜さはもとより、並木正三得意の大掛かりな舞台転換が評判となりました。
当時の記録にも「此度(このたび)の道具立(どうぐだて)は三十石(『三十石艠始』)の時より道具数多く、古今の大道具、見事見事」とあり、評判の程が窺えます。
そして正三は、明和4年(1767年)には、自身が作中に登場する『宿無団七時雨傘(やどなしだんしちしぐれのからかさ)』、明和7年(1770年)には『桑名屋徳蔵入船物語(くわなやとくぞういりふねものがたり)』、明和9年(1772年)には、オランダ人が登場する『三千世界商往来(さんぜんせかいやりくりおうらい)』と、話題性ある優れた作品を次々と書き下ろしていきました。(つづく) (M)
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