大薩摩節 その1
おおざつまぶし その1
歌舞伎十八番のひとつである『矢の根』では、大薩摩主膳太夫(おおざつましゅぜんだゆう)※と名乗る人物が曽我五郎のもとへやって来て、年始の挨拶を交わし、年玉を置いて立ち去っていきます。主膳太夫の年玉である宝船の絵は、『矢の根』の重要な小道具として活躍しますが、突如として現れる主膳太夫が何者か、戸惑われる方も多いかと思います。
大薩摩主膳太夫は、『矢の根』で用いられている浄瑠璃〝大薩摩節〟を語る太夫で、『矢の根』を初演した二世市川團十郎と、交誼ある仲であったため、舞台上で私人に立ち戻って、年始の挨拶を交わすという趣向が生まれました。現在では大薩摩主膳太夫を歌舞伎俳優が勤めますが、かつては大薩摩節の太夫が実際に舞台上に現れて、年始の挨拶を交わす演出になっていました。
ではこの〝大薩摩節〟が、いつ頃誕生し、どのような展開を経て、現在に到ったかを見ていきましょう。
〝大薩摩節〟は、初世大薩摩主膳太夫が創始した、江戸で生まれた浄瑠璃です。しかし主膳太夫が、どのような経歴の人物なのか詳しいことはわかっていません。一説には水戸の出身で、薩摩外記の弟子となり、後に一流を興したと言われていますが、史料に乏しくどこまでが事実か不明です。(つづく) (M)
※大薩摩文太夫の役名で上演する場合もあります。文太夫は三世大薩摩主膳太夫の前名です。
歌舞伎 今日のことば
バックナンバー
-
「蘭奢待」
-
「実盛の白髪染め」
-
「鎧櫃の”前”」
-
「大口」
-
「かんかんのう」
-
「酒呑童子」
-
「江戸のリサイクル」
-
「首実検の扇」
-
「伽羅」
-
「高野聖」
-
「小幡小平次」
-
「六代被斬」
-
「国崩し」
-
「勘亭流」
-
「公平」
-
「東海道四谷怪談」
-
「魚づくし」
-
「善玉悪玉」
-
「旗本奴」
-
「丁半ばくち」
-
「十種香」
-
「伊勢物語」
-
「草薙剣」
-
「紙衣(紙子)」
-
「平敦盛」
-
「三輪山伝説」
-
「道成寺」
-
「青海苔と太神楽」
-
「見立」
-
「三筆・三蹟」
-
「獅子と牡丹」
-
「寺子屋」
-
「水天宮」
-
「お数寄屋坊主」
-
「赤姫」
-
「虚無僧 その2」
-
「虚無僧 その1」
-
「絵看板」
-
「すし屋」
-
「だんまり」
-
「太郎冠者」
-
「屋体」
-
「鬘と床山」
-
「三遊亭円朝」
-
「道成寺もの」
-
「羽衣伝説」
-
「下座音楽」
-
「消え物」
-
「表方と裏方」
-
「在原行平」
-
「秀山十種」
-
「熊谷直実」
-
「夏芝居」
-
「定式幕」
-
「伊達騒動」
-
「朝倉義景」
-
「大薩摩節 その5」
-
「大薩摩節 その4」
-
「大薩摩節 その3」
-
「大薩摩節 その2」
-
「大薩摩節 その1」
-
「時代物と世話物」
-
「シェイクスピア」
-
「松羽目物」
-
「少年俳優」
-
「板付」
-
「ツケ」
-
「大道具と小道具」
-
「俠客」
-
「大名火消」
-
「閻魔と政頼」
-
「浅葱幕」
-
「玄冶店」
-
「江戸の火消」
-
「苧環」
-
「天覧歌舞伎」
-
「揚幕」
-
「拍子舞」
-
「香盤」
-
「仙人の堕落」
-
「ヒーローからヒロインに」
-
「かけすじ」
-
「一幕見」
-
「曾我物の舞踊」
-
「大前髪」
-
「虎の巻」
-
「名題と外題」
-
「土佐派&狩野派」
-
「襲名」
-
「この世のなごり 夜もなごり」
-
「知盛」
-
「幕間」
-
「佐藤継信・忠信兄弟」
-
「権太」
-
「柝」
-
「黒衣」
-
「並木正三 その4」
-
「並木正三 その3」
-
「並木正三 その2」
-
「並木正三 その1」
-
「独参湯」
-
「天狗」
-
「花道」
-
「落窪物語」
-
「屋号」
-
「千穐楽」
-
「見得」
-
「顔世御前」
-
「義経の家来」
-
「山科閑居」
-
「切口上」
-
「岡村柿紅」
-
「鹿ケ谷」
-
「差金」
-
「曾我物」
-
「しゃべり」
-
「川連法眼」
-
「猿若」
-
「戸隠伝説」
-
「玉本小新」
-
「招き看板」