虚無僧 その2
こむそう その2
歌舞伎では、『忠臣蔵』以外でも虚無僧の姿の登場人物が出てきます。
まず、『彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)』の女丈夫お園。女だてらに行方不明の甥と敵を探す彼女は、虚無僧に変装します。何人(なんびと)の前であろうとも天蓋は脱がなくとも天下御免、という"特権"は男装する彼女には都合のよいものです。
そして一番有名なのは、黒の着流し、高下駄、腰にさした尺八一貫、すぼめた傘をまるで笠のようにかぶって駆け出してくる...といえばお分かりですね、助六です。彼もまた虚無僧を連想させる扮装をしています。
正徳5年(1715年)、二代目市川團十郎は、中村座で『坂東一寿曾我(ばんどういちことぶきそが)』で曾我五郎を演じましたが、そのなかで"虚無僧"に扮した場面があり、これが大当たりとなりました。
翌年、中村座の『式例寿曾我(しきれいことぶき)』では曾我の世界に助六がとりこまれ、助六=曾我五郎という設定がうまれました。そして、その扮装は現行に近い傘、尺八、黒の着付...といったものになっていました。江戸中の評判になった虚無僧姿のイメージが投影されたと思われます。(み)
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