天狗

てんぐ

 深山に住まい、背には翼を、手には羽団扇を持ち自由に空中を飛行するといわれる物の怪。多くは山伏のような装束で、大天狗は顔が赤く高い鼻をもち一本歯の高下駄をはいており、小天狗(烏天狗という)はカラスのような嘴をもっているといわれています。

 《天狗倒し》(何もないのに大きなものが倒れる音がする)や《天狗笑い》(どこからともなく笑い声がする)など山奥で起こる不可思議な現象は天狗のせいにされることが多いようです。

 日本各地に伝承が残っていますが、『彦市ばなし』に出てくる天狗どんのように神通力のある異形のもの、『高時』のように人や仏法に悪事をなす魔物、恨みを持って死んだものの変化した姿、山や教えを護る護法神...とその性格はさまざまです。

 このほかにも能や歌舞伎には、高僧との法力争いに破れ逃げ帰る是界坊(能『是界』)や太郎坊(能『車僧』)、牛若丸に剣術を指南する鞍馬天狗(能『鞍馬天狗』)、子供をさらう天狗たち(能『花月』、歌舞伎『雙生隅田川』)などが登場します。(み)



解説

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