中村錦之助 襲名披露会見

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来年4月歌舞伎座で、中村信二郎が二代目中村錦之助を襲名することが決定し、21日襲名発表会見が行われました。
「中村錦之助」は信二郎の叔父にあたる萬屋錦之介の前名で、萬屋一門にとって大事な名跡の復活となります。

中村富十郎―――

中村富十郎

今から9年前、信二郎さんは私のもとでいろいろと勉強したい、そして指導していただきたい、とお一人でいらっしゃって、それ以来お引き受けし、今日に至っております。そして、この錦之助襲名、こんなに嬉しい事はございません。というのは、亡くなりました萬屋錦之介くんは、戦後、特に親しかった私の青春の親友でございます。この信二郎さんを“錦之助君”と呼べると、私は青春が帰ってきたような気がして、非常に嬉しいのでございます。そして、このお預かりしておりました9年間、活躍して成果をあげ、今日に至りました。これからも一生懸命応援したいと思っておりますので、新しい未来の中村錦之助を皆様もどうぞよろしくお願いします。

中村時蔵―――

中村時蔵

以前、永山松竹会長から、信二郎は本名のままだから、中村錦之助はどうだろうかとお話がありました。萬屋錦之介でなくて宜しいのですかと聞くと、やはり歌舞伎の名前のほうがいいから二代目中村錦之助でどうだろうかと。従兄弟の歌六・歌昇、叔父の嘉葎雄の了解を得て、この度、錦之助を襲名させていただくことになりました。この話をこれまで進めて下さいました、永山会長に襲名する錦之助の姿を見ていただけない事は残念でなりませんが、二代目錦之助としてその志に報いるようがんばってくれたらと思っております。



中村信二郎―――

中村信二郎

この度、亡き叔父が歌舞伎時代、そして若い頃の映画時代に名乗っておりました、中村錦之助を二代目として襲名させていただくことになりました。この錦之助という名前を襲名させていただきましたからには、歌舞伎界で代々残せるような大きな名前にしていきたいと思っております。そのためには私の師である天王寺屋のお兄様(富十郎)、私の兄・時蔵からも色々教わり、毎日毎日一歩ずつ勉強していきたいと思っております。どうぞ皆様よろしくお願いします。



最初に錦之助という名前を聞いてどのような感想を持ちましたか---

私としてはちょっと迷いました。歌舞伎界の名前というよりは、映画スターの名前ですから。でもある時ふと、だれも継がなかったらこの錦之助という名前は忘れ去られてしまう、と思ったんです。
今回自分が錦之助を継いで、これが三代目、四代目とずっと繋がっていけば、100年後200年後の歌舞伎界にもこの名前が受け継がれ、ずっと叔父の錦之助も生き続ける。そのためには歌舞伎の世界でしっかりとした足場を作らなくてはいけないし、毎日のお役を大事にしていかなくてはいけないと強く思うようになりました。

信二郎さんが目指す錦之助は---

もしも叔父の錦之介が映画に行かず、歌舞伎界にいたら、若いときはどんな役をやっていただろう・・・そんなことも考えながら一つ一つの役を大切に勤めていきたいと思っています。

信二郎さんにとって叔父の錦之介とは---

私は子供のときから錦之介の叔父に甘えてばかりいまして、叔父は兄たちには割りと、いろんなことを厳しく教えていたのですが、僕は小さかったので、「いいよ、お前は。」と常に可愛がってくれて、叔父が出るテレビなんかによく出させていただきました。
芝居に対しては、お客様は毎日違う人が観ているんだから、一つ一つ一生懸命やりなさい。それと品のない事はしてはいけない。その二つをよく言われました。
思い出話はたくさんありますが、叔父を見舞いに行き、一から歌舞伎の古典を勉強したいという思いを伝えた時、大変喜んでくれまして、一緒に写真を撮ろうと二人でツーショットの写真を何枚も撮ったんです。そうやって喜んでくれた、叔父の名を継いで、歌舞伎界で大成すれば、もっと喜んでくれると思っております。叔父の嬉しがってくれた笑顔を忘れずに、毎日精進していきたいと思います。

二つの演目のお役について---

中村錦之助

『鬼一法眼三略巻 菊畑』の虎蔵ですが、叔父錦之介が映画界に行く前、最後に歌舞伎座で勤めた大役です。本興行ではなく、子供かぶき教室での舞台でしたが、先代の吉右衛門が来年から映画に行くはなむけにこの役を錦之介にやらせて吉右衛門劇団として、送り出してやろうと言って選んで出した演目だそうです。だから私は、歌舞伎に錦之助の名前が戻る今回、ぜひともこの役が勤めたかったのです。天王寺屋のお兄さん、播磨屋のお兄さん、兄も一緒に出てくださいます。その中で、錦之助という名前の第一歩を踏み出したいと思っております。

『双蝶々曲輪日記 角力場』は、天王寺屋のお兄さんが、与五郎と放駒は君にピッタリの役だと言ってくださいました。与五郎はつっころばしの二枚目の若旦那、放駒長吉は勢いがあって、大きな壁…天王寺屋さんに勤めていただく濡髪長五郎にぶつかっていく役です。ほんとに今の自分にふさわしい役どころを選んでいただいたと思っており、一生懸命今から勉強して勤めたいと思っております。

襲名披露は『双蝶々曲輪日記 角力場』の放駒長吉/与五郎の二役、『鬼一法眼三略巻 菊畑』の虎蔵実は牛若丸となります。平成19年4月2日(月)~26日(木)の歌舞伎座「四月大歌舞伎」での新錦之助の誕生が今から楽しみです。

中村錦之助 (家系図)

2006/12/23