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仁左衛門 記者取材会 大阪松竹座七月大歌舞伎

 7月、大阪松竹座では、「七月大歌舞伎 関西・歌舞伎を愛する会 第十六回」が上演されます。

 公演に先立ち、平成16年4月の歌舞伎座で好評を得、大阪では初の上演となる『渡海屋・大物浦』の知盛役、定評のある『身替座禅』の山蔭右京役を、また『女殺油地獄』では監修を務める片岡仁左衛門を囲み、記者取材会が行われました。

片岡仁左衛門―――

片岡仁左衛門

 大阪ではお客様が入ってくださらなかった時代を経験していますので、七月の「関西・歌舞伎を愛する会」が、このように定着したこと、本当に嬉しゅうございます。
 そして、この公演のきっかけを作ってくれた澤村藤十郎君に感謝し、一日も早く彼がこの公演に戻ってくれることを願っています。

 この公演は、初めて歌舞伎をご覧になられる方にも、絶対に分かっていただけるお芝居、そして、ただストーリーが分かるだけではなく、いろんなことが考えられ、そして観ていて楽しいお芝居を上演します。

 歌舞伎は必ずしも、ストーリーが分かることだけが重要なのではなくて、肌で感じていただけるもの、心に直接訴えかけてくるものがあります。それを感じていただければ、かならず感動してもらえると思っています。

『渡海屋・大物浦』について―――

 この公演は研究会ではないので、テンポアップを心がけています。また、演じ方についても、お客様に楽しんでいただけるように、文楽さん、紀尾井町の叔父さん(二代目松緑)、河内屋さん(三代目延若)、私、この4つを取り入れてやっています(笑)。

知盛の難しさについて―――

 感情を訴えるのに、昔の人の訴え方と、今の人の訴え方とでは、違うところがあるんですよね、そこをいかに表現していくかが一番難しい。
 この作品の格を考えながら、誇りと悲しみ、悔やみと怒り、そういった複雑な心を糸にのってお芝居をする。そこが歌舞伎役者にとって、難しくもあり、楽しさでもあります。

 余談ですけが、私の友人が「歌舞伎なんて、ちゃっちゃとやれば15分ぐらいで終わる物。なんで、1時間も2時間もやるねん。」って言うんです。話してしまえばそうなんですが、それを2時間にも膨らませる楽しさ。とても非現実的な空間ですが、それを非現実的と思わさないようにしなきゃいけない。そこが楽しいんです。

前半の渡海屋銀平について―――

 あそこでは、登場していない義経との駆け引き、義経たちに見せるためのお芝居してるわけですから、それをお客様に、匂わすでようでなく匂わせる。それがやっぱり演者としての心得ですね。

丸本歌舞伎への思い―――

仁左衛門

 とにかくお客様のハートに伝えることを心がけています。もっとストレートにしたほうが良いのでは、あまりいろんな論法をくっつけて綺麗にやると伝わらないのでは、でもここを全部取っちゃうと、面白みがなくなるのでは…それらのかみ合いが難しいんです。ですが、結局はどうしたらお客様に満足していただけるかということですよね。歌舞伎に馴染みの無いお客様にも感動していていただけること、これが大切だと思っています。

 古典物をやっていく場合に、「なぜ、こういう形が残っているのか」という事を、まず考えなきゃいけないと思うんです。
 その上で、なるほどと思う事は踏襲する、そして、疑問を感じた場合には、それは直してもいいのではないかと。思いつきで崩してはいけないですけれども、考えて考えた上でなら直していってもいいんじゃないかと思っています。

『女殺油地獄』について―――

 海老蔵君に教えるのは今回初めてですから、どういうふうに吸収してくれるか。今後、東京の歌舞伎座でも、『女殺油地獄』をやっていける立場にあるから、そういう意味では非常に心強いですね。

 『女殺油地獄』のように、上方独自の演目に目を向けるだけでなく、東京にもある演目でも、関西の演出のほうが優れている、そういったものにもぜひ目を向けてほしいと思います。東京だから東京のやり方でやるんじゃなくて、両方を比べて、「あっちやりたいな」という気持ち、そういうものが出てきてくれれば、さらに嬉しいですね。

 この作品について、お吉が与兵衛に惚れているとか、与兵衛にも、どこかそういう気持ちがあるとか、そういうふうに考える方が多いんですが、関西人っていうのはそうじゃなんですよ。隣近所の関係が、お姉さんのように本当に親身になって面倒をみてくれたり、甘えたり。そういった背景があって、その中で、与兵衛は面子(めんつ)をすごく気にする、非常に弱い男が突っ張っている、そこがどこまで出せるか。

 殺しも、最初は無我夢中ですけれども、だんだん心の中に残虐性が帯びてくる。そして傷だらけの鼠を猫がもてあそぶような快感を覚えてくる。そういったような気持ちがどこまで出せるか。これも私が何度もやっている間に出てきたわけですけれどもね。ですから、最初はテンポよく進むんですが、だんだんとテンポが落ちてくる、相手は弱ってくる…そういった変化も大事ですね。

仁左衛門
 


『身替座禅』について―――

 ここでもやはり品格。単に彼女に会いに行って良い気持ちで帰ってきて、しゃべっているだけじゃなく、どういう立場の人か。持仏堂を持っている方ですからね。それだけの人の、のろけ話。
 ですから単に面白さを強調するのではなく、その人の浮かれた気持ちが、自然とお客様に、楽しいね面白いね、と思っていただけるようにしないといけません。
 お客様を受けさそうと思ってると、品格というものが落ちますから、あくまでも上品に、そして、片意地はらずに。

 これは余談ですけど、いつも面白いなと思うのは、お客様にはご婦人方が多いわけですよね。この右京は、ある意味では女性の敵。でも(この作品は)喜ばれるのね。自分の亭主だったら、喜んでられへん…面白いね。

 この他にも、昼の部の最初は『鳴神』。家の芸である鳴神上人を海老蔵、雲の絶間姫を孝太郎が演じます。続いての愛之助と壱太郎による『橋弁慶』。
 夜の部では岡本綺堂の新歌舞伎の名作『鳥辺山心中』を愛之助の半九郎、孝太郎のお染という花形の二人が情感たっぷりに演じます。

 公演情報は こちらをご覧ください。

仁左衛門

2007年06月14日

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