染五郎が語る、大阪松竹座『阿弖流為』

染五郎が語る、大阪松竹座『阿弖流為』

 10月3日(土)の初日を前に、大阪松竹座 歌舞伎NEXT『阿弖流為<アテルイ>』に出演する市川染五郎が、作品への思い、大阪公演への意気込みを語りました。

阿弖流為が歌舞伎になった驚き
 新しい歌舞伎をつくりたい、そのためにどんなキャラクターを描くか――、選ばれたのが阿弖流為だったと染五郎は言います。「一番意識したのは“スーパー歌舞伎”。『ヤマトタケル』(昭和61年2月新橋演舞場)を見たときの興奮は忘れられません。歌舞伎として、いや、演劇としても今までなかったような、新しい歌舞伎が誕生した瞬間だったんじゃないかと思いました。あれから約30年、次の新しい歌舞伎ができないか、そこを目指して」、“歌舞伎NEXT”『阿弖流為』が誕生しました。

 阿弖流為という人物を描きたい思いを持ち続け、達谷窟(たっこくのいわや)を訪れたり取材したりする中で、「劇団☆新感線の『アテルイ』(平成14年8月新橋演舞場)で、夢がかなったと思っていました。それが再び出会えた、しかも歌舞伎で。もうびっくりしました」。上演の前にはゆかりの地を訪れる機会があり、そのままの自然が広がる壮大な風景を前に、「ここに住む人を守る。川に血が流れたり、木が切り刻まれたりされたら、それをやめさせるために戦う」と、阿弖流為の心情に思いを馳せたそうです。

定義のない新しい歌舞伎

染五郎が語る、大阪松竹座『阿弖流為』

 「新しい歌舞伎の定義もない中、どうやってつくっていくのか。歌舞伎だとこういう表現、演出、手法があるという引出しは十分に持っていき、(演出の)いのうえひでのりさんに判断してもらおう、そう思って稽古に臨みました。しかし、稽古が進むにつれ…、あまり気にならなくなりました。結局、歌舞伎NEXTをつくる、それはこの歌舞伎をつくっている皆の中にある、それでいいんじゃないか、何をしなければいけない、ということはない、と稽古後半になって思うようになりました」

 歌舞伎俳優が歌舞伎のあらゆるものを「ぱあっと広げて見せて」選んでもらう、「ここは歌舞伎でやろう、ここは新感線でいこう、という区別の仕方だけはしてはいけない気がしていました」。結果として染五郎が感じたのは、いのうえ演出は「見得、見顕し、女方、歌舞伎の手法って“格好いい”、という思いが込められている。見得の、女方の格好よさを認識させられました」。

 東京公演を振り返り、新しい歌舞伎、歌舞伎NEXTの手応えはというと、よくわからない…、「というのも、お客様が思った以上にお芝居として見てくださっている感じがしたので」と染五郎。そして、いよいよ大阪公演が始まります。

幸せな時が再びやってくる、いざ大阪へ
 「劇場の大きさがまったく違い、舞台の裏側もまったく違いますから、まずは同じに見えるようにつくることが先決ですね。それにしても、あの芝居をコンパクトなところでやれる…、どれだけすごいことになるのか」と、はやる気持ちを抑えきれない様子が見えます。大阪松竹座への出演は3年前の夏以来となりますが、新作となるとその年の2月、『大當り伏見の富くじ』が話題を呼び、客席が一体となった大盛況の舞台が思い出されます。

 「勘九郎君と両花道で渡り合うせりふ、お互いにらみあって、花道を駆けていく。このシーンがずっとできるんだ、こんな幸せなことはないな」と思った稽古から、東京を経て大阪へ。再び始まる幸せの時に向けて、染五郎はますます意欲を新たにしていました。

 歌舞伎NEXT『阿弖流為』は、10月3日(土)から17日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて販売中です。

2015/09/16