菊之助『NINAGAWA十二夜』への思い

菊之助『NINAGAWA十二夜』への思い

 6月新橋演舞場、7月大阪松竹座で上演される『NINAGAWA十二夜』を前に、英国バービカンシアターでのロンドン公演を終えた尾上菊之助が、作品への思いを語りました。

 ロンドン公演での初日、カーテンコールの拍手を頂いた時に、蜷川先生の演出によって歌舞伎の歴史とシェイクスピアの力が橋渡しされた『NINAGAWA十二夜』という作品が、とても興味深いものとして英国の方に観ていただけた事を実感しました。

 今回、『NINAGAWA十二夜』を、ロンドンのお客様が、現代劇でも古典劇でもない、現代の歌舞伎として観て下さいました。それは小さなことかもしれませんが、歌舞伎の歴史にとって、とても幸せなことだと思いますし、そのような評価をしていただいたからには、今回の凱旋公演にも生かさなければいけないと思っています。

 日本の公演も、ロンドン公演と同じ形での上演になります。初演以来の三幕構成を二幕構成に変更し、歌舞伎的な演出を少し押さえ、論理的な部分を加えながら、スピード感もさらにアップしています。今まで東京や博多でご覧になった作品とはまた違った、厚みを増した作品になっていると思っています。

 二幕目は舞踊で始まります。幕開きから、一瞬にしてシェイクスピアの国の方々を日本の世界に引き込めるよう、日本人の魅力を凝縮した踊りを新たに作りました。英国では、この場面だけは字幕を止めるというチャレンジもしました。踊りを通して自分たちの体全体から歌詞を感じていただけるように創り上げた舞踊が "二幕目の幕開きの踊りで弾みがついた"と現地で評価していただく事ができて、それはとても嬉しかったですね。

 最近、お客様が舞台を観て笑って下さっているという感覚が大好きになりました。幕が開いてからの客席の笑い声というのはたまらないですね。父が勤めている丸尾坊太夫や捨助の役もやってみたくなります。お客様から『NINAGAWA十二夜』は綺麗で美しく、さらに面白くて、見た後とても快適といっていただける事がありますが、それは本当に嬉しい事です。

 初演以来、皆様にご支持をいただき上演を重ねることが出来ています。お客様、共演者スタッフの皆さん、そして演出して下さった蜷川さんに本当に感謝しています。回数を重ねて演じられるという喜びは一言では語り尽くせません。今回、上演を重ねる事で生まれる熟成に、ロンドンという場所での経験が加わり、作品がさらに深みを増しています。日本の皆様には、ぜひロンドンの香りを作品の中に感じていただきたいと思っています。

 ただ一つ、ロンドン公演で残念に思ったのが、劇場に花道が無かったことでした。もう少し奥の客席の皆様にもパワーをお伝えしたいという思いが僕の中にありました。新橋演舞場と大阪松竹座には花道がありますから、ロンドンでのスピード感と歌舞伎のもつ劇空間が融合して、面白い化学反応が起こるのではないかと、凱旋公演が始まるのを今から楽しみにしています。

公演情報はこちらをご覧ください
新橋演舞場六月大歌舞伎『NINAGAWA十二夜』
関西・歌舞伎を愛する会 第十八回七月大歌舞伎『NINAGAWA十二夜』

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2009/05/17