藤十郎、『曽根崎心中』お初1400回のカーテンコール

藤十郎、『曽根崎心中』お初1400回のカーテンコール

 

 6月25日(木)、博多座「六月博多座大歌舞伎」の昼の部にて、坂田藤十郎が『曽根崎心中』で1400回目のお初を勤めました。

 平成21(2009)年4月、歌舞伎座さよなら公演で1300回のカーテンコールに応えていた姿と、少しも変わらないお初が、今度は博多座の舞台でお客様の熱烈な拍手に迎えられてカーテンコールに登場しました。博多座は徳兵衛を勤める鴈治郎の襲名披露の真っ最中、お初が初演以来のみずみずしさをたたえてドラマを見せています。いつもと同じように幕が下りたあと、今日は再び緞帳が上がり、舞台中央にはお初の姿が…。

藤十郎、『曽根崎心中』お初1400回のカーテンコール

 初演は昭和28(1953)年8月新橋演舞場、記念すべき1000回は平成7(1995)年1月、大阪の中座でした。今月は「アンコールにお応えして」の上演とあって、お初の姿を目に焼き付けようと、連日多くのお客様が詰めかけています。そして25日、藤十郎は、1400回目のお初、藤十郎の名前では175回目となるお初を勤めました。

 深々と2度、頭を下げた藤十郎は静かに立ち上がると、場内の隅々にまで感謝の気持ちを届けるかのように、両手を大きく広げました。続いて、博多座代表取締役芦塚日出美社長と、久右衛門を勤めた中村梅玉より花束贈呈が行われ、藤十郎はお客様に向かって「ありがとうございます」と感謝の心を表し、いつまでも続くカーテンコールの喝采に応えました。

坂田藤十郎のコメント
 本日、『曽根崎心中』のお初を演じて、初演以来1400回を達成させていただきました。まことに感慨深く、昭和28年8月、21歳のとき、東京の新橋演舞場で、父・二代目鴈治郎の徳兵衛と復活初演した舞台が、まるで昨日のことのようによみがえってきたような、そんな感じがいたしました。

 回数もさることながら、初演から数えて62年という長きにわたり、19歳のお初という女性を演じ続けてきましたことにも深い感慨がございます。この間、さまざまな思い出があります。特に忘れられないのは、平成7年1月、大阪の中座での1000回達成の日で、あの阪神大震災の前日でした。その後の大変なときでもお客さまが見に来てくださったことは大変ありがたく、感謝の気持ちは私の胸に深く刻まれております。

 自分の人生で『曽根崎心中』という作品に出合えた私は幸せです。お初という女性に出合えたことも運命だと思っています。お初が私の歌舞伎人生を変えてくれました。1400回演じていても、私は、毎回毎回、お初を新しく生きています。それは初演以来、変わりません。

 『曽根崎心中』を上演しているときはいつもお客様がより近くに感じられます。お客様に支えられて演じ続けて来られました。感謝の気持ちで、明日の千穐楽もお初を生きたいと思っています。

 博多座「六月博多座大歌舞伎」は、明日26日(金)が千穐楽。藤十郎のお初をどうぞお見逃しなく。

2015/06/25