山田洋次監督・勘三郎 10月新橋演舞場製作発表
きっかけは―――
勘三郎―――
山田監督がアメリカで、(シネマ歌舞伎)『野田版鼠小僧』をご覧になって興味をもってくれたっていうのを聞いたんです。「山田監督が興味を持った、映像で!」それじゃ撮ってもらわなきゃいけないんじゃないのって(笑)。それでこうなったんです。
歌舞伎、『文七元結』への思い―――
山田監督―――
僕は、小学生の頃から落語少年で、ずっと落語が好きで、先代の小さん師匠との付き合いや、色々な会で上演したりと、落語の世界とはかなり付き合いが深いと思っております。
歌舞伎の場合は一ファンで、そんなに深く歌舞伎について、うんちくを持っているわけではないのですが、『文七元結』が好きで、その舞台をみながら、いろんな感じることを勘三郎さんに申し上げたら、それをそのまま修正して本を変えてみようと。
変えるといっても、今まで『文七元結』をご覧になってるかたが、ここがはっきり変わったとわかるような変わり方じゃなくて、全体の色合いや人間像の掘り下げ方を深めて、“もっと楽しくなってるな”というふうになるのが僕の夢なんです。本当に心から楽しめて、笑ったり泣いたりできる舞台を作るためにはどうしたら良いか、という苦労をしなきゃいけないと思っています。
僕は『文七元結』って映画作りたいと思っていたほど『文七元結』というのは僕の中で特別なものなんですね。
今までとの違い―――
勘三郎―――
僕は『男はつらいよ』の寅さんが大好きだったんですけど、まるで長兵衛が寅さんのよう(笑)本当にホワーっとしてる。
長兵衛の周りは皆良い人で、タコ社長がいたり、女房のお兼が、今までの怒ってばっかりじゃなくて、さくらのような感じになってる(笑)葛飾柴又が、江戸の深川に移っちゃったみたいなね。
山田監督―――
二人で泣き出して、「泣くなみっともねえ」「泣くなってお前のほうが泣いてんじゃないか」って、あれはね志ん生のせりふですよ(笑)。圓生さんや志ん生さんたちの落語のせりふを使わせてもらっています。
長兵衛を取り巻くいろんな人たちは、寅さんの周りと僕の中ではかなり似たものがあると思います。みんなが困ったな困ったなと思って悩んだりして。
勘三郎―――
それに、悪い人が出てこない(笑)。似てるんですよ、寅さんと長兵衛って。長兵衛の芯は変わらないけれど、もっと抜けていてもいいんじゃないかなと思っています。
どんな作品に仕上げたいか―――
山田監督―――
登場する人間の実在感みたいなものが、どしっとしていればいるほど、楽しくなるし、もっと笑えるし、ある意味で、もっと泣けるものになるんじゃないのか、そうしたいなと思っています。
落語っていうのはかなり泣けますからね、泣けるといっても悲しいんじゃなくて、あんまりハッピーなので涙が出てしょうがないっていう。舞台もそういうふうにしたいなと思っています。
勘三郎―――
『寅さん』もそうですけど、見終わった後に、なんかホッコリしますでしょ。なんか良かったなって。それで映画館後にするじゃないですか。そういう良い雰囲気になるような作品にしていただきたいし、僕もそう勤めなくちゃいけないと思っています。
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