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第3回歌舞伎美人サロン 清方芸術のなかの歌舞伎〈その二〉

第3回歌舞伎美人サロン 清方芸術のなかの歌舞伎

 『清方/Kiyokataノスタルジア―名品でたどる 鏑木清方の美の世界―』が開催されているサントリー美術館で、12月7日(月)に行われた「第3回歌舞伎美人サロン」。ゲストの松竹衣裳株式会社常務取締役 海老沢孝裕氏とサントリー美術館学芸員 三戸信惠氏の対談の前半は「清方作品の中で歌舞伎と出会う」をテーマにお話ししていただきました。
 その中で、同展の後期(12月16日~1月11日)に展示されている「春の夜のうらみ」「道成寺(山づくし)・鷺娘」の2作品についてのお話を、一部ご紹介いたします。
※第3回歌舞伎美人サロン 清方芸術のなかの歌舞伎〈その一〉は コチラをご覧ください。


■春の夜のうらみ
三戸―――
 こちらは永く行方がわからなかった作品で「春の夜のうらみ」と題されたものです。ご覧になってすぐおわかりになると思いますが、道成寺が主題となっているものです。清方はこの作品を描いた大正11年頃、実はスランプに陥っており、苦しみもがいていた頃の作品と思われます。

海老沢―――
 歌舞伎絵というよりは、女性画というようにも見えます。こちらの衣裳は、お馴染みの赤綸子の衣裳のようにも見えますが、この桜の柄は今の歌舞伎で使う枝垂桜とは違っていて珍しいと感じます。そして、今の役者さんに、こういう柄もあると知らせてあげたいと思いました。袖丈もかなり長めですね。大正時代は振り袖で踊られたこともあると聞いていますが、やはり舞台では少し長さが合わないと思います。きっと、清方がイメージの上で描いたのではないでしょうか。イメージでこのように美しく描けることに感心しています。

三戸―――
 清方は写生を絵にするタイプというより、思い描いたイメージをそのまま手にするような人だったようですね。

海老沢―――
 そうですね。これは大いに参考になります。

■道成寺・鷺娘
三戸―――
 こちらは「道成寺・鷺娘」です。二曲一双の屏風に、右には道成寺、左には鷺娘が描かれています。大正期の清方の作品には、少し憂いを帯びた顔をしているものが多いのですが、こちらもそうした作品の一つです。また、清方は「道成寺・鷺娘」を対に描くのが好きだったようで、他にもそのような作品が多く見受けられます。

海老沢―――
 こちらの帯は狂言模様ですね。五穀豊穣を願い、腰網や魚の鱗、船や杵といったものに願いを込め、今のような柄になったと伝えられています。歌舞伎では、これらの柄の中に役者さんのお家の紋が入っていますが、こちらの作品の紋は役者の家とは関係がないようですので、舞踊の道成寺だと思います。柄は現在舞台で使っているものとほぼ変わらないようですが、この幔幕柄という火炎太鼓が描かれている柄は、今はほとんど白は使わず玉子色という黄色い幔幕をよく使います。黄色で暖かさを表現しているのですが、白というのも綺麗だなと思います。
 鷺娘の方ですが、これは関西のものではないでしょうか。襟にちょっと赤いものが見えますが、これは多分「返し」になっているのだと思います。「返し」は上方特有のものですから。でも僕はこれを見て、とても色っぽいなあと思います。
 衣裳全体が黒と白のコントラストになっていますが、黒と白の組み合わせというのは元はおめでたいものなんです。今は白黒というとお葬式ですけれど、昔は結婚式のときに白黒や白紫といった幕を使っていたようです。そういうイメージからすると、これはおめでたい色使いと言えるのではないかと思います。

三戸―――
 舞台衣裳には役者さんのアイディアが採り入れられることもあるようですが、その際に難しいと感じることは何でしょうか。

海老沢―――
 やはり歌舞伎の衣裳となると、何を作る事になっても今では手に入らないものが増え、生地もなかなか手に入らなくなってきているんです。絹ひとつとっても、質が悪くなるというわけではないんですが、薄くなってきています。一度中国の絹を使ってみたのですが、色によって染が入らず、はじいてしまったことがありましたので、国産の物を使用しています。

第3回歌舞伎美人サロン 清方芸術のなかの歌舞伎


 この2作品の他にも、歌舞伎演目が作品名になっている「お嬢吉三」「毛剃」「鏡獅子」「狐火」「保名」「戻橋」や「神田祭」など、現在展示されている作品についても、歌舞伎ファンに嬉しい貴重なお話を色々伺いました。

海老沢氏と三戸氏の対談の後半は、次回のニュースでお伝えします。


第3回歌舞伎美人サロン 清方芸術のなかの歌舞伎海老沢孝裕(えびさわたかひろ)
松竹衣裳株式会社 常務取締役営業本部長

1958年神奈川県川崎市生まれ。78年松竹衣裳(株)入社。
歌舞伎や商業演劇も手掛けつつ、前進座を担当。92年ごろから十七代目市村羽左衛門、その後、二代目尾上辰之助(現・四代目尾上松緑)を担当。
現在は本社勤務となり演劇界全般に携わりながら、経験に裏打ちされた豊富な知識をもって、歌舞伎衣裳に関する後進の指導や伝統文化の保存に努めている。

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