5月南座『小笠原騒動』製作発表記者会見

5月南座『小笠原騒動』製作発表記者会見

 5月南座では、五月花形歌舞伎『小笠原騒動』が上演されます。10年前、南座にて復活上演し絶賛を博した作品の待望の再演となり、今回は中村橋之助・片岡愛之助・中村勘太郎・中村七之助の花形4人が新たな『小笠原騒動』を創り上げます。上演に先立ち製作発表が行われ、出演者が意気込みを語りました。

中村橋之助
 10年ぶりに『小笠原騒動』を南座で上演できますこと、本当に嬉しく思っています。この演目は以前、市川猿之助さんも上演された事があり、「いつかは橋之助さんもぜひおやりなさい」とすすめていただいた事もあって、南座で10年前、中村翫雀さん、中村扇雀さん、市川染五郎さんで初めて勤めさせていただきました。当時、ポスターのデザインや宣伝にアイディアを出し合ったことも、よく覚えています。
 スペクタクル性・ドラマ性に富んだ物語ですが、歌舞伎本来のアナログ的な技法を使って、どこか紙芝居を見るようなお芝居を作っていきたいと思っています。初演から10年を経て、自分の積み重ねてきたものを、集大成としてこのお芝居に出すことができたらいいなと思っております。


片岡愛之助
 『小笠原騒動』に出演させていただくのは今回が初めてです。以前から評判を伺っており、ぜひ出演させていただきたく思っておりました。復活狂言はなかなか再演が難しいと言われていますが、この作品は再演・再々演を重ねてきた人気の高い演目なので、非常に楽しみです。また、今回は2年前の『霧太郎天狗酒醼』のメンバーと再びご一緒させていただくことも、とても嬉しく、本当にありがたい事と思っています。
 今回は小笠原隼人、奴菊平の二役を勤めさせていただきますが、二人の役柄の演じ分けや、早替りなどを見ていただきたいと思っています。

5月南座『小笠原騒動』製作発表記者会見

中村勘太郎
 以前からこのお芝居にとても憧れていました。10年前、南座の舞台を見て心を奪われ、博多座の再演では最前列で観劇しました。良助の身の上に涙して、水車での立ち廻りに興奮して...物語も素晴らしく、とても歌舞伎らしいこの作品に出演させていただくのは、大変幸せなことです。この4人は、おととし3月の南座公演でも一緒で、色々話し合ったことを舞台に生かしましたので、今回も稽古から皆で良い舞台が創り出せるように、一生懸命取り組んでいきたいと思っています。
 今回二役を勤めます。小笠原豊前守の役柄は恋に目がくらんだお殿様、飛脚小平次は、水車の上での"人参と大根の立ち廻り"がきっと面白くなると思います(笑)。ぜひ、楽しみにしていてください。


中村七之助
 この演目でなにより記憶に残っているのは、10年前の南座公演のポスターかもしれません。出演者4人の首だけが写ったポスターはとても衝撃的でした。このポスターのように宣伝方法に役者たちも加わり、お客様のためのお芝居を創り上げるという考え方は、僕たちが上演させていただいている浅草歌舞伎のお手本にもなっています。その作品の魂を、新しくこのお芝居に携わる僕たちが汚さぬよう、一生懸命勤めたいと思っています。
 私も今回二役勤めます。お大はこの物語の中で一番の"悪"だと思うので、危うい雰囲気を出していきたいです。小平次の女房お早は、身分の高い人の身勝手によって苦しい思いをする、その哀れさが出せればいいなと思っています。


大役をニ役勤めること、上方歌舞伎の魅力―――
橋之助
 二役という話を伺い本当に悩みました。良助は体力的にも大変なお役で、10年前は終演後、家に帰って箸を持つのも嫌になる程の疲労感を感じました。そのお役に犬神兵部を加えた二役を勤めるのはきっと大変な事になると思いますが、今までこのお芝居で心残りになっていた思いをぶつけ、そして敵役を二役勤めることで、この『小笠原騒動』を新たな見方で見ることができるのではないかと思っています。
 上方歌舞伎は、この『小笠原騒動』もそうですが、今の時代から見ても遠い存在ではない、どこか人の皮膚の匂いがするような身近な物語が多いのではないでしょうか。良助は敵役ですが、本当は家族を守りたかっただけ...家族を大事にするために悪事に手を染めていきます。それは、時代を超えて今の世の中でもあり得る事で、そういう物語性が上方歌舞伎の魅力の一つだと思います。

 公演情報は、こちらをご覧ください。

2009/04/16